はじめに
弊社は25年以上に渡り電話代行サービスを営んでおりますが、たまに「電話での退職代行をお願いできますか?」というお問合せがあります。先に申し上げておきますが、残念ながら弊社の代行サービスは「電話での退職代行サービス」はございませんので悪しからずご了承くださいませ。
今回、そのような経由がありまして、「電話」「代行」という言葉から「電話での退職代行」という業界が気になりまして調べてみました。ということで、今回は出来るだけ客観的かつ俯瞰的に捉えて「電話での退職代行」についてご説明したいと思います。
かつては退職というと、気が重くとも社会人として自分で話をするものと考えられていました。しかしながら、時代は変わり、その流れの中で退職代行というものが注目を集めるようになりました。退職代行自体は結構前から存在しているサービスなのですが、最近になって何かと話題にのぼるのが電話での退職代行です。ここでは、その電話での退職代行について改めてご紹介していきたいと思います。
そもそも電話での退職代行とは?
そもそも電話での退職代行というのは、どのようなものなのでしょうか?実は、意外にも流れ自体はとてもシンプルです。働いている方が退職代行業者へ申し込みをすると、退職代行業者が本人に代わって会社へ電話で退職の意向を伝えてくれるというものです。本人は会社に顔を出すことなく、書類や貸与物の郵送のみで退職することができます。
もっと具体的に言うと、以下のような形となります。
Who(誰が):退職代行業者のスタッフが
Who(誰に):退職を希望している申込者の勤めている会社に
What(何を):退職に関する連絡を
When(いつ):申込者が指定した実施希望日に
Where(どこで):電話口で
How(どのように):電話で口頭のやり取りをする
さらに、電話での退職代行は以下のようなサービスでもあります。
Why(なぜそうするのか?):申込者が退職を希望しているから
What If?(もし、そうしたら):かなり高い確率で退職ができる
What Not?(もし、そうしなかったら):いつまで経っても退職ができないままになる
このように、電話での退職代行というのは退職を希望しているものの何かしらの理由があって退職を言い出せない方が退職を実現するために利用するサービスなのです。
電話での退職代行におけるメリット
では、電話での退職代行におけるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?電話での退職代行のメリットについて触れていきたいと思います。
【いわゆるブラック企業でもかなり高い確率で退職できる】
ブラック企業というのは、本当に後を絶ちません。今の日本でブラック企業を根絶するのは難しいでしょう。ただ、ブラック企業で働いていても心身をすり減らすだけです。それがわかっているからこそ退職したいのに、ブラック企業だからこそ辞めさせてもらえないというケースは少なくありません。
辞めさせてもらえないという理由だけではなく、ブラック企業で自分と同じように心身をすり減らしながら働いている他の人のことを考えるとなかなか言い出せないということもあるでしょうし、上司がさまざまなハラスメントをしてくるために話したくとも話せないということもあるでしょう。そういう方ほど電話での退職代行を利用したほうがいいと言えます。
もちろん、常識が一切通用しないブラック企業も存在するのですが、たいていの場合、ブラック企業であっても退職代行業者という第三者が介入することによって驚くほどおとなしくなるものです。直接電話をしたり対面して話したりするとなんだかんだで丸め込まれてしまうという方でも、電話での退職代行であれば安心です。
【会社に顔を出さずに退職することも十分に可能】
退職代行業者を使わない一般的な退職を経験したことのある方であれば、退職したい旨を伝えるときの気まずさやその後の肩身の狭さといったものが身に染みているかと思います。実際にこういった気まずさや肩身の狭さのことばかりを考えてしまって、退職に踏み出せないという方も少なくありません。
職場の人間関係で悩んでいるからこそ余計に気まずくなるのが嫌だという方もいれば、職場の人間関係に問題がないからこそ罪悪感で肩身の狭い思いをしてしまうという方もいるでしょう。退職したい旨を伝えて終わりではないからこそ、何とも言えない気持ちをしばらく引きずることになるのです。
ただ、電話での退職代行業者に依頼をすれば、会社に顔を出さずとも退職することが可能です。もちろん、書類や貸与品を郵送するなどの作業は必要になりますし、場合によっては勤務先から電話がかかってくる可能性もあるのですが、会社に顔を出さずにそのまま退職することは十分に可能なのです。
会社に顔を出さずに済むことによって、退職のときに多くの方が経験する気まずさや肩身の狭さといったものを回避することができます。これも電話での退職代行におけるメリットと言えるでしょう。
【即日での退職も可能】
電話での退職代行の利用を検討している方の中には、「本当に今すぐにでも辞めたい」という切実な思いを抱いている方も少なくありません。即日で退職できるのであれば、それに越したことはないという気持ちで電話での退職代行にすがっている方もいるでしょう。実際に、電話での退職代行で即日退職ができる可能性はあります。
即日退職ができるのはありがたいものの、いざ即日で退職となると「無断欠勤になるのでは......?」と不安になる方もいるでしょう。しかしながら、有給休暇があればそれを使うこともできます。即日退職だからといって絶対に無断欠勤になるとは限りません。
辞めたいと思ったときにすぐ退職できる可能性があるというのは、それだけで心の余裕にもつながってきます。このあたりも電話での退職代行におけるメリットと言えるでしょう。
【トラブルになりにくい】
電話での退職代行であれば、会社ともトラブルになりにくい傾向にあります。先でもお話しましたように、いわゆるブラック企業であっても第三者が入ることによって真っ当な対応をするようになることもあるのです。退職代行業者という第三者が介入することによって、トラブルに発展しにくいという部分もメリットになってきます。
もともと職場においては、ちょっとしたことがきっかけでトラブルに発展するようなことも珍しくありません。本当に何でもないようなことから信じがたいような大きなトラブルに発展したというケースもあります。退職というデリケートな問題が絡んでくれば、そこからトラブルに発展する可能性は思っている以上に高いのです。
特に、「辞めたい」という気持ちが出てきているのであれば、そういう気持ちが出てくるだけの理由があるはずです。冷静に話をしようとしても感情的になってしまうかもしれませんし、最初に話をすべき直属の上司が辞めたい理由に大きく関わってくるとなるとそれこそ感情があふれ出してしまうかもしれません。
感情のコントロールというのはとても難しいものです。冷静に話をしようとしても徐々に感情的になってしまうかもしれませんし、感情的な部分が見えてくると相手も感情で返してくる可能性が高いです。感情に感情で返すというシーンは、職場であればそれまでにも嫌と言うほど目にしてきたはずです。
お互いに感情的になってしまうと、円満な退職というのは難しくなります。本来であれば多少気まずい思いをするだけで済んだところが、トラブルになってゴタゴタの中で辞めることになる可能性もあります。そうなってしまうと、お互いに嫌な思いをするだけで何のメリットもありません。
しかしながら、電話での退職代行であれば会社のほうも第三者が介入することによって、そう露骨に感情的になることはありません。例えば、親子で喧嘩をしているときでも周りの人の目があるとお互いに感情を抑える努力をするかと思います。感覚的にはこれと同じです。
退職代行業者という第三者の目があるからこそ、会社のほうも感情を抑えてくれますし、その分、トラブルにも発展しにくくなります。何よりも退職を希望している本人が会社側に感情をぶつけずに済むのです。これも電話での退職代行における大きなメリットと言えるでしょう。
【弁護士に依頼するよりも費用を抑えられる】
退職代行というのは、弁護士に依頼することもできます。弁護士に依頼すれば、会社との交渉など退職にあたってお願いできることは増えます。ただ、弁護士に依頼するとなるとなんだかんだでかなりの費用がかかることになります。基本料金からして跳ね上がりますし、そこに成果報酬やオプションといったもので追加の費用もかかってしまうでしょう。
もちろん、中にはどれだけお金がかかったとしても弁護士に依頼して自分の満足いく形で退職をしたいという方もいるかもしれません。ただ、人生は長いのです。退職して終わりではありませんし、その後の生活のことを考えれば退職のためにかける費用というのは抑えられるのであれば抑えたほうがいいでしょう。
電話での退職代行業者であれば、弁護士に依頼したときと比べるとその費用はかなりリーズナブルになります。どこの退職代行業者を利用するのかによっても違ってきますが、だいたい最初から料金が決まっていますし、追加費用も発生しないというところも少なくありません。
弁護士と比べるとできることも限られてきますが、退職するという目的を達成することを考えれば退職代行業者でも十分でしょう。費用も抑えられますし、費用を抑えられれば退職後も動きやすくなります。気持ちの面でも楽になるかと思います。このあたりも電話での退職代行におけるメリットになります。
【退職後のケアやサポートが期待できる業者もある】
基本的に電話での退職代行業者というのは退職する旨を伝えるだけなのですが、業者によっては退職後のケアやサポートをおこなっているところもあります。退職後というのは心細くなるものですし、次の仕事のことも考えなければいけません。
そういうときにケアやサポートが得られるのはかなり魅力的です。もちろん、退職後のケアやサポートまで求めているのであればそれに対応している退職代行業者を選ぶ必要があります。業者によりけりではありますが、これも電話での退職代行によるメリットと言えるでしょう。
電話での退職代行におけるデメリット
先では電話での退職代行におけるメリットについてご紹介しましたが、何もメリットばかりというわけではありません。メリットと比べると少ないものの、やはりデメリットはデメリットであるのです。
【退職するだけなのにお金がかかる】
これを言ってしまうと元も子もないのですが、特別な事情がなければ退職というのはもともとお金をかけずともできるものです。ただ、電話での退職代行を利用することによって確実にお金がかかることになります。
ただ、お金がかかるといってもきちんとした業者であれば法外な金額を請求されることはありません。最初から料金についても明確に提示されています。あとは、お金を払ってでも退職を代行したいのかという本人の気持ちのみです。
【退職後、勤務先だったところと良好な関係を築くのは難しい】
電話での退職代行自体は世の中に浸透していますし、利用者もかなり増えています。退職を希望している方にとってはまさに痒い所に手が届くようなサービスなのですが、退職代行業者から退職する旨を伝えられた会社側というのはやはりいい気分ではありません。
「本来であれば本人が言うべきことなのに......」と思うような人もいれば、「え~、そんなのってありなの......?」と感じるような人もいるかもしれません。もちろん、電話での退職代行業者を使わざるを得ない事情があるという方もいるのですが、退職代行業者を使うことに理解を示すことができない人も一定数いることを忘れてはいけません。
ケースバイケースではあるものの、基本的に退職後、かつて勤務先だったところと良好な関係を築いていくのは難しいでしょう。働いていたときによくしてくれた上司や同僚との関係もダメになってしまう可能性があります。あくまでも可能性の話ではありますが、そのリスクがある時点でやはりデメリットと言わざるを得ないでしょう。
【悪質な業者を選んでしまうとトラブルに発展する】
電話での退職代行は需要が高まっていますので、退職代行業者も続々と増えつつあります。ただ、中には悪質な業者もいます。間違ってそういう業者を選んでしまうと、トラブルに発展する可能性がぐっと高まってきます。余計なトラブルを起こされたのではたまったものではありませので、業者選びは慎重におこなっていきましょう。
【法律に関わる業務がおこなえない】
例えば、退職する旨を伝えてもらうときに有給休暇を消化できるように交渉してもらおうと考えている方も多いのではないでしょうか?しかしながら、こういった交渉というのは法律に関わる業務になりますので弁護士でないとできないのです。「とりあえず退職できればいい」と考えている方であれば問題はないのですが、その際の交渉まで考えている方にとっては電話での退職代行業者というのは物足りないでしょう。
退職代行についての賛否
電話での退職代行というのは、賛否がわかれているサービスでもあります。辞めたくとも辞められないという方にとっては、本当にありがたいサービスです。
厚生労働省が公開している「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000213219.html)」によると、民事上の個別労働紛争相談件数において2008年時点では5位だった自己都合退職が2017年には2位にまで上昇しているのです。
(出典:厚生労働省)
この推移から見ても、退職で悩んでいる方が増えているのは言うまでもありません。だからこそ、電話での退職代行が支持されているのでしょう。
一方で、退職代行業者からいきなり電話を受けることになる会社側が困惑してしまうケースも少なくありません。会社にとっては青天の霹靂となることもあり、理由がわからないままの退職でその後の改善に活かせないという部分も出てきます。会社側にとってはあまり好ましいサービスではなく、電話での退職代行サービスへの対策を講じているところも目立つようになってきました。
さらに、弁護士から見たときに法的に問題があると言えるようなケースも増えてきているようです。有資格者がいない状態でも業者が会社との交渉などを進めるケースもあり、違法になる可能性があると警鐘を鳴らすために情報を発信している弁護士の方もいます。
個人的には、心身を病んでしまっていたりブラック企業に勤めており辞めさせてもらえなかったりなどの特別な事情がない限りは、電話での退職代行サービスを使うべきではないと考えます。気まずい、肩身が狭い、罪悪感があるといった理由で電話での退職代行サービスを利用するのは逃げになりますし、社会人として何のプラスにもなりません。そういう嫌な思いをするのも社会人の仕事です。