現代では「電話恐怖症」という言葉があるほど、電話対応に対してネガティブな印象を持つ人が増えています。突然鳴る電話、声だけでやり取りするプレッシャー、相手の表情が見えない不安など、電話特有の緊張感に苦手意識を抱いている方も少なくありません。
ですが、電話が苦手なのは決して自分だけではありません。実際、電話対応に悩む人は多く、むしろそれが “普通” といえるほど一般的な感覚になりつつあります。
かつて「電話応対コンクール日本一」に選ばれた橋本美穂さんも、「電話対応を苦手としているのはあなただけではなく、他にもたくさんいる」と知ることが、苦手意識を和らげる第一歩になると話しています。
自分だけが特別に不器用なわけではないと気づくだけでも、少し気持ちが軽くなり、電話へのハードルが下がっていくはずです。
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ここが苦手!電話対応
多くの人が電話対応に苦手意識を持つのには、いくつか共通の理由があります。以下に代表的な例をご紹介します。
1. 緊張する
電話は相手の顔が見えないため、反応をうかがいづらく、それが緊張につながることがあります。特に初対面の相手や重要なやり取りの場合、声だけでのコミュニケーションは難しく感じやすいものです。
2. 言葉遣い
ビジネスの電話では、丁寧な言葉や敬語が求められます。そのため、「間違った言い方をしてしまったらどうしよう」と不安になり、言葉に詰まってしまうことも少なくありません。
3. 感情が読みづらい
顔の見えないやり取りでは、相手の感情や本音が把握しづらく、ちょっとしたすれ違いが生まれることもあります。対面やチャットと違って空気感をつかみにくいため、会話がぎこちなく感じることも。
4. 切りたくても切れない
話を早く切り上げたいと感じていても、失礼にならないように気を使いすぎてタイミングを逃してしまうことがあります。「もう終わりにしたいのに…」という気持ちと、マナーの狭間で葛藤する人も多いのではないでしょうか。
特にこの「切りたくても切れない」という感覚、心当たりのある方は多いのではないでしょうか。電話対応に苦手意識を持つのは、決してあなただけではありません。そうした気持ちに寄り添いながら、自分に合った対処法を見つけていくことが大切です。
話すときの話術
「電話対応日本一」に輝いた橋本美穂さんは、電話でのコミュニケーションにおいて重要な“話し方のコツ”について、以下のようなアドバイスをしています。
・そこにいるような感じで語りかける
電話は顔が見えない分、声の距離感が大切になります。まるで目の前に相手がいるかのように、やさしく語りかけるように話すことで、相手に親近感を持ってもらいやすくなり、自然と信頼関係を築くことができます。
・優しい話し方
話し方の「トーン」は、言葉以上に相手に印象を与えます。柔らかく、落ち着いた声で話すことで、相手に安心感を与えることができます。特にクレーム対応などのシーンでは、声のトーンひとつで相手の怒りが和らぐこともあるほど、効果的な手法です。
・言葉遣いを少し間違っていても、誠意を伝えることが大切
もちろん正しい敬語や言い回しは大切ですが、それ以上に大切なのは誠意を持って話すこと。多少の言葉の間違いがあっても、相手はあなたの真摯な姿勢や気持ちを感じ取ってくれます。言葉に自信がなくても、相手の立場を思いやる心を忘れずに伝えることが何より大切です。
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クレーム対応の話術
クレーム対応では、まずは相手の話を最後までしっかり聞くことが大前提です。感情的になっている相手に対して途中で話を遮ってしまうと、火に油を注ぐような結果になりかねません。
とはいえ、延々と続くクレームをただ聞き続けるだけでは、対応する側の負担も大きく、状況の収束が見えなくなることもあります。そんなときに有効なのが、話を受け止めつつも自然に切り上げる「魔法の言葉」です。
それが、「お客さまのお気持ち、よく分かりました」というフレーズ。この言葉を使うことで、相手の感情に共感し、話をきちんと受け止めたという印象を与えることができます。
同時に、会話の主導権を自分の側に戻すことができるため、その後の対応(解決策の提示や次の行動)へとスムーズに移行しやすくなります。相手に「分かってくれた」と感じてもらうことが、クレーム対応において最も大切な第一歩なのです。
一番大切にしていること
橋本美穂さんが、電話応対の仕事において後輩たちに繰り返し伝えているのが、「電話対応は “話す仕事” ではなく、“聞く仕事” である」という姿勢です。
電話というツールは、一見 “話すこと” が中心のように思われがちですが、実は最も重要なのは、相手の話にしっかり耳を傾けること。相手の言葉の奥にある気持ちや背景を理解しようとする「聞く力」こそが、信頼される電話応対の原点なのです。
相手が本当に求めていることは何か、どんな感情で話しているのかを敏感に感じ取り、それに応じた対応をすることが、プロフェッショナルな電話応対には欠かせません。
橋本さんの言葉は、電話対応に限らず、あらゆるコミュニケーションの基本を思い出させてくれます。
まとめ
電話対応に不安を感じる方にとって、「電話対応日本一」に輝いた橋本美穂さんの話術や心構えは、大きなヒントになります。橋本さんのアドバイスを取り入れることで、これまで苦手意識を持っていた電話対応も、少しずつ自信を持ってこなせるようになるはずです。
電話対応は、決して特別なスキルを持つ人だけができるものではありません。相手の気持ちに寄り添う姿勢と、ちょっとした工夫や意識の持ち方で、誰でも大きく改善することができます。
「電話が怖い」「緊張してうまく話せない」と感じている方こそ、橋本さんの実践的なアドバイスを日々の業務に取り入れ、少しずつ苦手を克服していってください。きっと、あなた自身の成長と自信にもつながっていくことでしょう。