最近では、「バイアス」という言葉をよく見聞きするようになりました。バイアスというのは偏り、その偏りを生じさせるもののことを指します。
一般的には「○○バイアス」という形で使われることが多いのですが、実は仕事で陥りやすい3つのバイアスがあります。
それが情報バイアス、確証バイアス、信念バイアスです。ここでは、この3つのバイアスについて詳しくお話していきたいと思います。
情報バイアス
情報バイアスというのは一般的には医療研究などの分野において使われる言葉なのですが、実はビジネスシーンにも深く関係してくる言葉です。
簡単に言ってしまうと、必要な情報を得るときに生まれてしまう情報の偏りのことを情報バイアスと呼びます。仕事で陥りやすい情報バイアスにおいては、主に2つの要因が考えられます。
まず、ひとつの要因として考えられるのが質問者バイアスと呼ばれるものです。
情報バイアスの要因が質問者バイアスというとややこしく感じられるかもしれませんが、質問者バイアスというのは質問者の先入観による偏りと言っていいでしょう。
質問者の先入観によって得られる回答に偏りが出てしまって、情報バイアスが発生してくるのです。
例えば、健康食品を取り扱っていて、既存の顧客に関する調査をするとしましょう。
ここで質問者が「健康食品を購入している人であれば、健康のために運動をしている」という先入観を持ったまま顧客に質問を投げかけていくと、運動をしていることが前提となってしまい得られる情報に偏りが出てきてしまいます。
顧客が聞かれたことに正直に答えていたとしても、そもそもの質問の仕方に偏りが出てしまうため、結果にも偏りが出てしまうのです。
もうひとつの要因として考えられるのが、報告バイアスと呼ばれるものです。
これは何かを問われたときに回答者が意図的に回答を変えてしまうことによって発生してくる偏りのことを指します。
「意図的に」というと悪意があるかのように思えるかもしれませんが、そこに悪意があるとは限りません。逆に、罪悪感などから回答を変えてしまう方もいるのです。
例えば、サプリメントの定期購入をしている顧客にお伺いをするとしましょう。
基本的にサプリメントというのは毎日継続して摂取することによって、いろいろな変化を感じられるものです。
そのため、「毎日お飲みいただいていますでしょうか?」と尋ねられれば、顧客は毎日飲んでいなくとも「はい」と答えてしまうのです。「毎日飲むものを定期購入しておいて、毎日飲んでいないのは失礼だ」と思ってしまうため、正直に答えるのをためらってしまうのです。
情報バイアスへの対策
どのような仕事であっても、情報収集というのは欠かせないものです。特に、今の世の中はすべてにおいて移り変わりが激しいため、より積極的な情報収集が求められます。
ただ、いくら情報を集めたとしてもその情報に偏りがあったのでは、正しいベクトルに向かっていくことができません。では、どのように情報バイアスを回避していけばいいのでしょうか?
情報バイアスの対策としては、まず「誰にでも先入観がある」ということを自覚することです。
日頃から先入観を持たないようにしているという方もいるかもしれませんが、人間というのはそれまでの自分の人生経験から物事を判断していくことになりますので、本当の意味での客観性というのは人ひとりでは確保できないのです。
そのためにも、何かしらの情報収集をするのであれば複数の人間で偏りがないかと検討した上でおこなっていくようにしましょう。
「三人寄れば文殊の知恵」という表現がありますが、複数人で検討することで正しい方角がわかるということもあるのです。
また、回答者によって偏りが出てしまう部分に関しては、そういった偏りが出ることを前提に質問の仕方などを変えていく必要があります。
罪悪感を抱かせてしまうような回答であっても、情報収集をする側としては本音を知りたいわけです。罪悪感を抱かせないようなフォローを入れた上で、質問をおこなっていくようにしましょう。
ちなみに、顧客相手だけではなく、これは社内でのヒアリングなどの際にも言えることです。
確証バイアス
確証バイアスというのは、何かしらの説を検証する際にその説を証明するような情報ばかりを集めて、その説の証明を邪魔するような情報を軽視してしまったり集めようとしてしまったりする傾向のことを指します。
自分の考えている説が有利になるような情報ばかりを集めてしまうことによって、偏りが出てくるようになります。
確証バイアスの典型的な例として挙げられるのが、血液型による性格診断です。
例えば、A型というのは血液型による性格診断では真面目で几帳面といったイメージがあるかと思います。ただ、血液型がA型の方というのは世の中にたくさんいるわけですし、その中には不真面目で大雑把なタイプも確実に存在します。
ただ、「A型の人は真面目で几帳面」というイメージがあるからこそ、真面目なA型の人や几帳面なA型の人を見つけては「ほらね!」と、さも血液型による性格診断が絶対であるかのように考えてしまうのです。
生きていれば、不真面目なA型の人や大雑把なA型の人とも出会っているはずなのに、そこをスルーしてしまうのです。
血液型による性格診断以外にも星座による性格診断といったものも確証バイアスの典型ですし、「大企業だから安心」「公務員だから安泰」「雨女」「晴女」「雨男」「晴男」といったものも身近な確証バイアスの例と言えるでしょう。
確証バイアスへの対策
血液型や星座による性格診断くらいであれば、そこまで大きな影響を及ぼすことはないでしょう。ただ、仕事で確証バイアスに陥ってしまうと正確な情報を把握することができなくなります。
極端な言い方をすると「こうだったらいいな」という方向に引っ張られてしまうので、自分たちにとって都合のいい情報しか仕入れなくなってしまうのです。
相手のニーズを無視することにもつながりますので、仕事が成り立たなくなってしまいます。
では、どのようにして確証バイアスを回避していけばいいのでしょうか?
まず、「誰にでも思い込みはある」ということを自覚することです。
「常識的に考えて......」「普通は......」という思い込みによって、正しく情報の取捨選択ができなくなってしまいます。思い込みがあるからこそ、その思い込みへの反対意見を考えることも大切です。
また、信頼性の高い統計や数値データで検証していくというのもひとつの対策になります。
もちろん、信頼性の高い統計や数値データを見つけるのも大変でしょうし、なかなか見つけられないこともあるかもしれません。
ただ、個人の思い込みよりは信頼性の高い情報で検討することで、偏りというものを少しでも減らしていくことができます。
信念バイアス
信念バイアスというのは、結果が正しければ、その結果に至るまでの過程までも正しいと勘違いしてしまうことを指します。
逆に言えば、結果がよくなければ、その過程がどれだけすばらしいものであっても否定されるということになります。
場合によっては、人格の否定にまで発展することもありますので、とても危険なバイアスと言えるでしょう。
例えば、営業などの仕事でノルマをクリアするために、あくどいやり方をしている人がいたとします。
ただ、上司はノルマをクリアしたという結果のみを評価し、どれだけあくどいやり方をしていたとしても「ノルマをクリアできるんだからこのやり方が正しい」と考えるようになり、他の社員にも同じやり方を強要するようになるかもしれません。
こういった積み重ねで、ごく一般的な企業がいわゆる悪徳企業へと変貌していくようなこともあります。「結果を出せないお前が悪い!」という風に人格を否定するようなことになっていけば、そこで働く社員もボロボロになってしまいます。
信念バイアスへの対策
信念バイアスへの対策としては、シンプルに結果と過程をわけて考える癖をつけることです。
過程に問題がなくとも結果が出ないことはありますし、過程に問題があっても運よく結果が出ることもあります。「結果と過程は別物だ」という当たり前のことを認識していくことが大切です。
特に、今の時代は多くの方が成果主義に陥っているものです。もちろん、結果も大切ではありますが、企業として過程も結果と同じくらい大切にする姿勢を忘れないようにしていきたいところです。
【電話応対編】仕事で陥りやすいバイアス
情報バイアス、確証バイアス、信念バイアスの3つは電話応対でも陥りやすいものです。
ただ、その中でも特に気をつけておきたいのが情報バイアスです。電話応対では情報のやり取りが欠かせませんので、ここで情報バイアスに陥ってしまうと大変なことになります。
「あの件についてだけど......」と言われたときに電話応対スタッフの勝手な思い込みで話を進めると食い違いが出てきますし、その都度「○○の件でしょうか?」という確認が必要です。
何かを確認するときにも、お相手の方が正直に答えやすいような表現を心がけていく必要があります。弊社の電話代行サービスではそういった部分にも気を付けて電話応対業務をおこなっておりますのでご安心ください。