今回は今も尚見直されている、ダニエル・ピンク氏の名著、日本では2013年に出版された『人を動かす、新たな3原則 売らないセールスで、誰もが成功する!』をビジネスマンの方に向けて、今一度読み解いてみたいと思います。
本書では主に、なぜ私たちは皆セールスに携わるのか?という問いに対する回答を紹介しています。
私たちは皆セールスをやっている
この本にはいくつかの魅力的なアイデアがあります。そのひとつは、好むと好まざるとにかかわらず、私たちは皆セールスをやっているということです。労働データ (当時の) を見ると、現在経済界では9人に1人、つまり労働者の1人が物を売って生計を立てている。車のディーラーや不動産屋等。しかし、本書では9人に1人以外の8人について直感している。
本書で調査したところ、9人中8人は名目上は営業職ではない人たちであることがわかった。彼らはマネージャーであり、プロジェクトチームのリーダーであり、教師であり、アートディレクターである。
彼らは膨大な時間を、私が「非セールス・セールス」と呼ぶ仕事に費やしている。彼らはセールスをしているのだ。交換をするよう説得しているのだ。私が持っている何かと引き換えに、あなたが持っている何かを私にください。しかし、それはドル建てではなく、時間建てであり、注意力建てであり、努力建てなのだ。
様々な労働者がどのように時間を使っているか
様々な労働者がどのように時間を使っているかを見てみると、伝統的な営業職であれ、その他の職種であれ、彼らの時間と労力の多くは説得、コントロール、影響に費やされている。実際のところ、営業職だと言うと、多くの人はそれをあまり好まない。
営業職に対する一般的なイメージやステレオタイプは、過去の伝統的なセールスの手法やアプローチに基づいて形成されてきました。強引なセールス、情報の非対称性を利用した説得、顧客の真のニーズを無視した商品の押し売りなど、これらの手法は時に顧客からの不信感や反感を生むことがありました。
その結果、営業職には「ぬるい」「いかがわしい」といったネガティブなイメージがついてしまったのです。
買い手と売り手の情報の非対称性
これはあらゆる面で非常に時代遅れの営業形態である。営業がぬるく、利口で、いかがわしく、二枚舌であるという見方は、営業そのものの性質というよりも、長い間営業が行われてきた状況についての見方だ。
私たちがセールスについて知っていることのほとんどは、売り手が買い手よりはるかに多くの情報を常に持っていた、情報の非対称性の世界から来ている。売り手が買い手よりも多くの情報を持っていれば、売り手はあなたからお金をむしり取ることができる。
だからこそ、「買い手は用心せよ」という原則があるのだ。しかし現在、多くの市場において、情報の非対称性は情報の平等性に近づきつつある。
情報技術の進化とインターネットの普及により、情報の非対称性は大きく減少してきました。今日の消費者は、商品やサービスに関する詳細な情報を手軽に入手できるようになり、それによってより賢明な意志決定を下すことができるようになった。
この変化は、営業の方法やアプローチにも影響を与えてる。過去のように、情報を独占して顧客を誘導するような営業手法は、今日の消費者には通用しない。逆に、透明性や誠実さを持って顧客との関係を築くことが、長期的な信頼関係の構築やビジネスの成功に繋がる。
また、レビューサイトやSNSなどのプラットフォームが普及した現代では、一つの悪い評価や不誠実な行動が、企業の評価や信頼を大きく損なう可能性があります。このような環境下では、企業や営業者は、顧客との信頼関係を最優先に考え、情報を公平に共有し、顧客のニーズに真摯に応える姿勢が求められます。
情報の平等性が進む中で、営業の役割も変わってきていると感じます。情報提供だけでなく、顧客のニーズを深く理解し、最適な解決策を提案するコンサルティングのようなアプローチが重要になってきているのかもしれない。
好むと好まざるとにかかわらず、私たちは皆セールスに携わっている
現代のビジネス環境では、情報のアクセス性が向上し、消費者やB2Bの顧客が自ら情報を収集し、自分たちのニーズに合わせて選択をすることが一般的になっています。これは、営業の役割やアプローチを再考する必要があることを示している。
従来の営業は、情報の提供者としての役割が中心でしたが、今日では顧客が自ら情報を収集できるため、営業の役割は情報の提供だけでなく、顧客のニーズを理解し、最適なソリューションを提案するコンサルタントのような役割が求められています。
また、好むと好まざるとにかかわらず、私たちは皆セールスに携わっている。私たちが日常的に自分の意見やアイデアを他人に伝え、納得させる行為を行っています。これは、プレゼンテーションや交渉、推薦など、多くの場面でのコミュニケーションスキルが求められることを意味しています。
営業が王道であるというのは、ビジネスの成功には顧客との関係構築や信頼の獲得が不可欠であり、それを達成するための手段として営業が存在するという考え方です。しかし、そのアプローチや方法は変わりつつあり、新しい時代に合わせた営業のスキルやマインドセットが求められています。
セールスや取引は、より深いレベルでの「価値」の交換
セールスや取引は、単に商品やサービスを金銭と交換するだけの行為ではなく、より深いレベルでの「価値」の交換である。教育者がクラスで生徒に知識やスキルを伝える行為も、ある種の「取引」であり、生徒はその知識やスキルと引き換えに注意や努力を提供しています。
このような視点から見ると、私たちが日常的に行っている多くの行為は、ある種の「取引」や「セールス」であると言えるでしょう。また、経営者や組織がこのような取引の本質を理解していることは、組織の成功にとって非常に重要です。
組織内でのコミュニケーションやマネジメントも、ある種の「取引」であり、マネージャーやリーダーは、部下やチームメンバーとの間で価値の交換を行っています。
このような視点から、セールスや取引のスキルや知識は、ビジネスだけでなく、日常生活や人間関係においても非常に役立つものです。私たちが持っているデータや知識を活用して、より効果的なコミュニケーションや取引を行うための方法を学ぶことは、私たちの生活やキャリアにおいて大きな価値を持つことです。
「同調」、「浮揚力」、「明晰さ」
セールスだけでなく、組織のリーダーシップやチームワーク、顧客との関係構築など、多くのビジネス活動において「同調」、「浮力」、「明晰さ」は、現代の組織やビジネス環境において非常に重要な要素です。
・同調
他人の視点や感情を理解し、共感する能力は、チームの協力や顧客との関係構築において非常に重要です。相手のニーズや期待を理解し、それに応じた提案や対応をすることで、信頼関係を築くことができます。
・浮揚力
セールスやビジネス活動においては、拒絶や失敗といったネガティブな結果に直面することも多いです。そのような状況で、自分自身を励まし、前向きな姿勢を保つ能力は、持続的な活動や成果を上げるために不可欠です。
・明晰さ
情報過多の時代において、情報を適切に整理し、重要なポイントを見極める能力は、効果的な意思決定や戦略策定に必要です。また、問題解決能力だけでなく、問題発見のスキルも重要です。
早期に問題を発見し、適切な対応をすることで、大きな問題やリスクを回避することができます。
コレらを取り入れることで、組織やビジネスの効果的な運営や成果向上に寄与することが期待されます。
セールスマンからコンサルティング的なアプローチへの移行
現代のセールスやビジネス環境において、単に商品やサービスを押し売りするのではなく、顧客の真のニーズや問題を理解し、それに対する最適なソリューションを提案するアプローチが重視されています。
顧客や見込み客の視点や感情を理解し、共感することで、真のニーズや問題を把握することができます。これにより、顧客との信頼関係を築き、長期的な関係を構築することができます。
顧客が自分の問題を正確に把握していない場合や、問題についての認識が間違っている場合、セールスやビジネスパートナーとしての役割は、問題を明確にし、真の問題を発見することになります。そして、その問題に対する最適なソリューションを提案することで、顧客の真のニーズを満たすことができます。
このようなアプローチは、従来のセールスの考え方から、よりコンサルティング的なアプローチへと移行していると言えます。顧客との関係を深化させ、長期的な信頼関係を築くためには、単に商品やサービスを売るのではなく、顧客の真のニーズや問題を理解し、それに対する最適なソリューションを提案することが重要です。
まとめ
従来の「商品を売る」だけのアプローチから、「価値や洞察を提供する」アプローチへの移行は、ビジネスの成功のための鍵となっています。顧客にコミットすることは、顧客のロイヤルティを高め、長期的なビジネスの成長をサポートします。
また、セールス担当者自身のスキルや知識を高めることも求められます。単に商品の特徴や価格を伝えるだけでなく、顧客のビジネスや市場の動向を理解し、それに基づいたアドバイスや提案をする能力が必要です。
このようなスキルや知識を持つセールス担当者は、顧客からの信頼を得やすく、ビジネスの成功に大きく寄与することができます。