感情というのは、人間とは切っても切れないものです。
感情があるからこそ人間はより人間らしくいられるわけなのですが、この感情に振り回されてコントロールできないという方は多いです。
感情にもポジティブなものとネガティブなものがありますが、特に困るのがネガティブな感情です。怒りや悲しみ、恐れ、嫌悪......こういったネガティブな感情に振り回されるのは誰だって御免です。
ここでは、そういったネガティブな感情をコントロールする方法についてご紹介していきたいと思います。
怒りの感情をコントロールするには?
怒りの感情をコントロールする前に、そもそも怒りという感情は何なのか、なぜ怒りという感情が発生してくるのかを考えてみましょう。
怒りに限らず、感情にはきちんと理由があります。理由があっての怒りなのですから、その理由にも目を向けていきましょう。
まず、怒りというのは自分の価値観にそぐわない事態になったときに発生してきます。例えば、自分の中で「こうあるべきだ」「こうあってほしい」というものは誰にだってあるでしょう。
こういった自分の期待であったり理想であったりという価値観が裏切られることで、怒りが発生してくるのです。
また、怒り以外のネガティブな感情がたまりにたまって爆発したときに怒りが発生するということもあります。
「疲れたなぁ」「つらいなぁ」「困ったなぁ」といったネガティブな感情がたまり続けて、限界を超えたときに怒りとなって一気に噴き出してくるのです。
結局のところ、怒りというのは期待から発生してくるものであると考えていいでしょう。本当は自分の味方でいてほしいのに、敵と見なすしかないような状態になってしまうからこそ怒りとなって出てくるのです。
ただ、怒りというのはそう長時間持続するものではありません。実際に怒りの感情を抱いたときというのは、瞬間的に爆発するような感覚を持つ方も多いのではないでしょうか?
つまり、この瞬間的な爆発というものをうまくコントロールできれば、怒りをコントロールできるのです。
怒りをコントロールするためには、自分が怒りの感情を抱いているということを素直に受け入れるところから始めなければいけません。
その上で、怒りの対象となっているものから目を逸らして6秒から10秒ほどでいいので深呼吸をしたり、無駄にせき込んでみたりしましょう。そうすれば、怒りに支配されるようなことはなくなるはずです。ちなみに、客観視するために怒りに点数をつけていくというのもおすすめです。
悲しみの感情をコントロールするには?
では、次は悲しみについてです。
悲しみという感情がなぜ発生してくるのかというと、何かを失ってしまったからです。
その何かというのは、自分にとって価値のあるもので執着しているものです。人でもモノでもどのようなものでも対象となり得ます。要は、執着によって悲しみが生み出されるのです。
しかしながら、執着しないようにすればいいという単純な話でもありません。
大切に思っていた存在がなくなってしまい、悲しむというのは人として当然の反応です。喜びあってこその悲しみでもありますし、悲しみが無駄なものであるとは言えないのです。
そんな悲しみなのですが、厄介なことにさまざまな感情の中でもトップクラス級に持続時間が長い感情でもあります。
だからこそ、完全になくすというのは現実的ではありません。どういうアプローチでコントロールしていくのかというと、悲しみをコントロールする際には徐々にグラデーションのようにその度合いを弱めていく方向で考えていきます。
多くの方が「悲しんじゃダメだ」と考えがちなのですが、悲しみは悲しみとして受け入れます。
悲しい感情を無理やり自分の中から排除しようとしたり無理に別のことを考えたりする必要はありません。
その代わり、ニュートラルな状態を目指してください。いきなり良い状態を目指すのではなく、まずは普通の状態を目指していくのです。
誰かと楽しくおしゃべりをしたり、自分で頑張って笑顔を作ってみたり、姿勢を正してみたりと普段の自分に戻れるようなアプローチを心がけていきましょう。
いきなり悲しみを消し去るのではなく、持続しやすい悲しみだからこそ徐々に弱めていくというのが得策なのです。
恐れの感情をコントロールするには?
恐れというのは、本能的な感情です。
未経験のことやよくわからないこと、知らないことなどに対しては、本能的に恐れを抱きます。
これらのことには命の危険があるからです。本能的に刻まれているものですし、自分の命を守るためにも必要な感情と言えるでしょう。だからこそ、恐れに関しても感情として受け入れることが大切です。
何に対して恐れを抱くのかというのは、人それぞれ違うかと思います。
例えば、キッチンでよく見かけるコバエが恐いという方もいるでしょう。ただ、普段よく見るコバエで人の命が左右されるということはほとんどありません。こういった実際の危険度を考えるのも恐れをコントロールする方法のひとつです。
改めて考えると、恐がっているものよりももっとも危険なことを日頃からしているということもあります。一度冷静になって身の回りの危険度というものを意識してみると、「あ、意外と平気かも」と恐れが和らぐでしょう。
また、恐れを抱くであろうタイミングで何をするのかを考えるのもおすすめです。要は、恐怖の対象を目の前にしたときにどう対処するかをあらかじめシミュレーションしておくのです。
いろいろなパターンを考えておくことで、いざ目の前に恐怖の対象があったとしてもスムーズに対処できますし、スムーズに対処できる安心感から恐れも和らいでいきます。
ちなみに、恐怖の克服ということであえて恐れを抱いている対象と積極的に触れ合うといったやり方もあります。ただ、これは微妙なところで、人によっては恐れがより大きなものになってしまうこともありますし、どれだけ頑張っても慣れないという方もいます。
嫌悪の感情をコントロールするには?
嫌悪というのは、実はいくつかのパターンが考えられます。例えば、虫などに対する嫌悪であれば世間一般としてのイメージであったり、自分の過去の経験であったりといった部分に起因するものもあるでしょう。
嫌悪の感情に関しても受け入れるのが大前提で、特に支障がないのであればそのままでも問題はありません。
ただ、どうしても嫌悪の感情をどうにかしなければいけないのであれば、自分の中に固定されてしまった対象物への認知というものを変えていかなければいけません。
そのためには対象物のいいところに目を向けたりすることもあるでしょうし、場合によっては自分のつらい過去を思い出す必要もあるかもしれません。地道な作業になります。
一方で、対象が人間の場合には同族嫌悪というものがあります。
同族嫌悪というのは、自分の嫌なところを相手の中に見出してしまうからこそ起こるものです。自分で「怒りっぽいのが嫌だな」と思っていれば、怒りっぽい相手に対して同族嫌悪の感情を抱くようになります。
同族嫌悪の場合には、相手とどう付き合うか、相手をどう変えるかといったことを考えるよりも、相手と距離を置いて自分が変わってしまったほうが早いです。
自分の嫌なところを改善できれば、自分の嫌なところを相手の中に見出すようなこともなくなるわけですから、相手への嫌悪感もなくなって、自分もレベルアップして一石二鳥です。
さらに、同族ではない嫌悪というものもあります。極端な言い方をすれば、怒りっぽい人がまったく怒らない人を嫌悪するといった感じです。
この場合、嫌悪の根底にあるのは相手への期待です。「期待なんかしてない!」と言うかもしれませんが、「ここさえ改善すれば好きになれるのに」という部分もあるのではないでしょうか?
相手への期待からの嫌悪に関しては、その期待を捨てることです。
もちろん、期待感というのは勝手に湧き上がってきてしまうものでもありますので、難しい部分もあるでしょう。ただ、その期待というのは自分勝手なものなのですから、相手には何の期待もせず関わらないようにするのが一番です。
基本的に感情は受け入れて、客観的に分析することでコントロールできる
怒り、悲しみ、恐れ、嫌悪の感情についてそれぞれコントロールする方法について心理学の見地からご紹介しましたが、基本的に感情は受け入れていくことが大切です。
感情を拒絶してしまうと、「なんでこうなるの!」と余計に追い込まれてしまいますし、逆に感情に振り回されます。どんと構えて、感情を含めて自分を受け入れましょう。
その上で、感情をできるだけ客観的に分析してみてください。今は特に感情的な方が多くなっているので、改めて自分の感情を客観的に分析するということはほとんどないでしょう。
どういうときにそういう感情が出てくるのか、なぜその感情になるのかというところを考えていくと、見えてくるものがあります。
人は無意識のうちに、自分の物差しで、自分の中の常識で考えていたり、感じていたりするものです。
自分の物差しというのは人それぞれ違うわけですし、世の中の常識だって時代の流れとともに変わっていくわけです。その中で必要以上の感情が生まれていて、その感情に振り回されているということがわかってくるはずです。
今の時代、「感情がなければいいのに」と思うこともあるでしょう。ただ、感情は必要なものでもありますし、完全になくすこともできません。
だからこそ、しっかりと受け入れて向き合って感情をコントロールしていきましょう。自分の中で生まれた感情なのですから大丈夫です。時間がかかってもしっかりとコントロールができます。
【電話応対編】怒り、悲しみ、恐れ、嫌悪の感情をコントロールする方法
怒り、悲しみ、恐れ、嫌悪の感情をコントロールする方法ということでお話してきましたが、最後に電話応対における感情のコントロールについても触れていきたいと思います。
もちろん、先でお話した内容は電話応対にも当てはまるものなのですが、電話応対だからこそのアプローチもあります。
まず、電話応対業務の場合、怒りや悲しみ、恐れ、嫌悪などのネガティブな感情が出てきやすいというところから理解しておかなければいけません。
電話越しだからと強い態度になってしまうお客様もいらっしゃいますし、もともとの人間同士の相性という部分もあります。
ただ、電話応対だからこそ救われる部分も確実にあります。そこにもしっかりと目を向けていきます。
電話越しだからこそ物理的な攻撃を受けることもありませんし、お客様から見えないところでマニュアルを参照したり、他のスタッフからの指示を受けたりということもできるわけです。
こういったところに目を向けていくことで安心感を持てるようになりますし、いろいろなお客様とやり取りをしていく中で「こういうときにはこうする」といった対処法のパターンもどんどん増えていくようになります。
業務上、ネガティブな感情に振り回されやすい部分があるものの、それと同時にそのネガティブな感情をコントロールしやすい環境にもあるということを理解していくことが大切だと思います。