営業活動というのはどのような業界にも欠かせないものです。営業活動自体にももちろん意味はあるのですが、やはり営業というのは他の仕事と比べたときに成果を求められる傾向にあります。
ただ、だからといって誰もが思うような成果を上げられているわけではありません。しかしながら、これまでなかなか成果を上げられなかったという方でも、心理学を応用することによって営業活動で成果を上げやすくなります。
ここでは心理学を営業活動に応用して成果を上げる方法として、営業活動において特に効果的な心理テクニックをご紹介していきたいと思います。
ドア・イン・ザ・フェイス
まずご紹介するのが「ドア・イン・ザ・フェイス」と呼ばれる心理テクニックです。そのまま「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」と呼ばれることもありますし、「譲歩的依頼法」と呼ばれることもあります。営業活動はもちろん、交渉をするときや説得をするときにも役立ってくれる便利な心理テクニックでもあります。
では、このドア・イン・ザ・フェイスというのはどのような心理テクニックなのでしょうか?
ドア・イン・ザ・フェイスでは本命の提案をいきなりぶつけるのではなく、その前に本命の提案よりも大きな提案をします。そこで一度断ってもらってから、本命の提案をぶつけていくというテクニックになります。これによって提案を受け入れてもらいやすくなるのです。
ここで気になるのが、なぜ本命よりも大きな提案をして、一度断られる必要があるのかという部分です。提案をする側というのは断られた後で譲歩するような形で本命の提案をぶつけることになるので、相手にしてみると一度断ったから譲歩してくれたように感じられるわけです。
それに一度大きな提案を断っているので、多少の罪悪感もあります。断っていることに対して罪悪感を抱いている中で、提案をする側が譲歩をしてくれているわけですから「こちらも譲歩しなければ」と考えるようになります。
ちなみに、何かをしてもらったから自分も何かを返さなければという心理のことを「返報性の原理」と呼びます。
例えば、サプリメントの営業をする場合には定期コースやまとめ買いなどの金額的に大きなものを先にすすめておいて、その後で「初回のお試しだけでもどうですか?」という形に持っていくとOKをもらいやすくなります。
ただ、本命の提案よりも大きな提案をする場合、その提案が大きすぎると常識を疑われてしまいますし、印象も悪くなってしまいます。それに相手がある程度は提案に興味を持っていないと、思うように効果を実感できません。そのあたりの見極めにも注意しておきましょう。
フット・イン・ザ・ドア
先ではドア・イン・ザ・フェイスについてご紹介しましたが、このドア・イン・ザ・フェイスとよくセットで挙げられるのが「フット・イン・ザ・ドア」です。「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」「一貫性の原理」と呼ばれることもあります。
さまざまなシーンで使えるものなのですが、もともと「ドアを閉められる前に足を入れて話を聞いてもらえれば勝ち」というセールスマンの営業から発展したものなので営業活動にこそ活かすべき心理テクニックと言えるでしょう。
フット・イン・ザ・ドアというのは、小さな要求を繰り返して「YES」の返事をもらい、最終的に大きな要求にも「YES」をもらうというテクニックになります。
先ではサプリメントの例を挙げましたが、サプリメントであれば「健康になりたいですよね?」「はい」「できるなら手軽な健康習慣がいいですよね?」「はい」「じゃあ手軽な健康習慣としてこのサプリメントはどうですか?」「はい」といったやり取りをイメージしていただければと思います。
もちろん、実際のやり取りではここまで簡単にはいかないでしょうが、人間というのは一貫性を保とうとする部分がありますので、今までの流れに逆らうような反応をしにくくなります。
要は、「YES」の返事を繰り返すだけで、「NO」という返事をしにくくなるわけです。
フット・イン・ザ・ドアは興味を示してくれない相手にこそ効果的で、その商品やサービスを選ばない理由というものをひとつずつ解消していくような形で相手の「YES」を引き出していくことが大切です。相手に「YES」と言わせるための質問を考える必要がありますが、そう難しくはないはずです。
もちろん、そのお願いの大きさにもよるのですが、人間というのはひとつお願いを聞き入れると、その後のお願いも聞き入れやすくなります。
実際に「もうひとつもふたつも同じかな」と思ってしまうことは日常的にもよくあるはずです。最初に何かひとつ聞き入れてもらう、受け入れてもらうとその後のハードルはぐっと下がってくるでしょう。
ただ、相手が期待通りの返事をしてくれるからと調子に乗ってしまうのはいけません。あれもこれもと調子に乗ってしまうと、相手が「カモにされているのでは......?」と疑心暗鬼になってすべてが台無しになってしまうこともあるのです。相手の反応を見ながら地道に積み重ねをしていきましょう。
ハード・トゥ・ゲット・テクニック
「ハード・トゥ・ゲット・テクニック」というのは、簡単に言ってしまうと特別感を出すことです。
例えば、子どもの頃、友達同士で「○○ちゃんには特別に教えてあげる」と秘密の話を聞かせてもらったことはありませんか?こういったことをきっかけに仲が深まるというのはよくあることで、これぞまさにハード・トゥ・ゲット・テクニックなのです。
最近では承認欲求という言葉をよく見聞きするようになりましたが、人間である以上は誰にでも承認欲求というものがあります。人間が持っているさまざまな欲のひとつと言えるのですが、この欲を満たしてくれる相手に対しては好意や信頼といったものを寄せやすい傾向にあるのです。
特に、今の時代は多くの人の承認欲求が高まっています。だからこそ、営業活動において「あなただけに特別にお話をしています」といった特別感を出すことはとても効果的なのです。
ただ、だからといって「あなただけです」「あなたは特別です」と繰り返すだけでは意味がありません。むしろ、表面的な言葉だけでは「口だけか」と簡単に見透かされてしまいます。
大切なのは、「なぜ特別なのか」という根拠も一緒に示すことです。サプリメントであれば「健康にも気を使われている方なので」「美容面にも力を入れている方なので」といった感じです。根拠を示した上で「あなたは特別なんです」と言えば、それは相手の心に響きます。
ラポールテクニック
ラポールというのはフランス語で「橋をかける」という意味の言葉になります。そこから自分と相手に橋がかかるかのように、心が通じ合っている状態や信頼関係のことをラポールと呼びます。「ラポールテクニック」というのは相手と信頼関係を築くためのテクニックと言えます。
厳密に言うと、ラポールテクニックというのは広い意味を持っています。というのも、ラポールテクニックと一口に言ってもその中にはいろいろなテクニックが含まれているのです。相手の仕草などを真似るミラーリング、相手のペースに合わせるペーシングといったものが代表的なものとして挙げられます。
例えば、同じミスをしたときでも許される人と怒られる人がいるかと思います。「理不尽だな」と思うでしょうが、これはラポールテクニックによるところもあるのです。
もちろん、もともとのキャラクターといった部分が関係していることもあるのですが、ラポールテクニックで信頼関係を築くことで可能なことでもあるのです。
少し話がそれてしまいましたが、ラポールテクニックで信頼関係を築くことによって「この人が言うなら多少高くとも買おうかな」「この人が言うなら申し込みをしようかな」という風に持っていくことが十分に可能なのです。
極端な言い方をすると、商品やサービスにそこまでの魅力がなくとも、信頼関係によって商品の購入やサービスへの申し込みに至るというわけです。
ただし、ラポール、つまり信頼関係を築いていくのはそう簡単なことではありません。どう信頼関係を築いていくのかといった部分はひとりひとり違ってきます。
しかしながら、誰とでも信頼関係を築いていけるようになれば、相手が誰であろうがどのような商品やサービスであろうが営業活動で一定の成果を上げられるようになるはずです。
フレーミング効果
営業活動の際には、商品やサービスの説明をすることも多いでしょう。そこでの見せ方や表現を変えるだけで、印象がガラリと変わり、成果につながるということもあります。同じ内容でも見せ方や表現を変えることで印象が変わるという作用のことを「フレーミング効果」と呼びます。
例えば、「成功率90%」と「10%の人が失敗」という表現であれば、前者のほうが明らかに印象がよくなるかと思います。これがまさにフレーミング効果なのです。
見せ方や表現を変えるだけではなく、何にフォーカスするかという部分が大切になってくるわけです。
実際に営業活動をしている方であれば、一言の重みというものを十分に理解しているかと思います。たった一言で好転することもあれば、順調にいっていたのにたった一言で台無しになってしまうということもあります。
どちらにしても営業活動において、言葉選びというのはとても大切です。だからこそ、普段から見せ方や表現に気を付けてフレーミング効果を駆使してみてください。
実際に同じ内容であっても、表現をあえて横文字にしてみるだけで反応が違ってくるようなこともあります。反応の違いを見ながら実践していけば、言葉選びも楽しくなってくるでしょうし、気持ちにも余裕が出てくるかと思います。
【電話応対編】心理学を営業活動に応用して成果を上げる方法
上記では一応対面することを前提に、営業活動で成果を上げるのに応用できる心理テクニックについてご紹介しました。もちろん、電話応対のときにも応用できるものはあるのですが、最後に電話応対だからこそ意識しておきたい部分について触れておきたいと思います。
電話応対だからこそ意識しておきたい部分としては、「傾聴」が挙げられます。傾聴というのはどちらかというと心理カウンセリングで重要視されるものなのですが、電話応対においても是非意識していきたいポイントです。
電話応対で営業となってくると、多くの人が一方的にまくし立てるように話す傾向にあります。もちろん、説明しなければいけない内容や話さなければいけないことがたくさんあるのでしょうが、それを聞かされているほうというのはいわゆる置いてけぼりの状態になってしまいます。
中には相手が受話器を置いたままにしているのにも気づかないまま一方的に話し続けるような人もいます。これでは相手の心はつかめませんし、ロボットと一緒です。話を聞いてもらいたいのであれば、相手の話も聞かなければいけません。
ただ、話を聞くといっても多くの人が聞き流している状態です。「傾聴」というのは耳を傾けて相手の話を「聴く」ことです。相手の話を聴きながら相手と向き合うことでもあります。そうすることによって、一方通行のやり取りではなくキャッチボールができるようになるのです。