クレーマーの見極め方
クレーマーの中には悪質なクレームを突きつけてくる人も少なくありませんは、悪質かどうか見極めるのはなかなか難しいと思います。威圧的な言い方で自分の要求をまくしたてる人は一見して、扱いにくい悪質クレーマーに思われがちです。悪質か、そうでないかの見極めのポイントとしては「要求が反社会性を持っていること、法的な根拠がない要求を内容が過大である事を認識しながらも、しつこく要求してきて利益を得ようとしている」かどうかです。
金銭をあからさまに要求することは恐喝罪になる事を悪質クレーマーは認識しています。なので直接そのことは言ってきません。よくある手口としては脅し文句を次々と並べ、企業やお店に恐怖心を与えます。そうなると企業やお店側は一刻も早くこの恐怖心から逃れたいと思いお金で解決してしまおうと考えてしまうのです。最初からこれが狙いなのです。
そもそも「クレームで得をする」ことはあり得ないことです。クレームからは損害の回復しか得ることはありません。要求をいかに迅速に拒絶し振り払うかが大事なこです。断固とした態度を持ちましょう。事前に会社全体で対策の方法、マニュアルを作っておくのもいいでしょう。
クレーマーのタイプを見極める
最初に、まず間違ってほしくないのはクレーマーもお客様だということです。暴言や侮蔑、脅迫や強要を伴う場合は残念ながらお客様とはいい難いですが、それ以外は間違いなくお客様です。クレーマーのクレーム内容が思いがけないビジネスのヒントになる場合もあります。ですので、厄介者の対応という姿勢ではなくしっかりとお客様への対応という姿勢がまず大切になります。対応がしっかりしていれば、同じクレームでもビジネスのヒントに、対応が悪ければただの文句にしか聞こえなくなります。
最初にクレーマー対応で重要なことは、先ずどのようなタイプのクレーマーなのか?を見極めることです。クレーム内容やタイプによって対応方法を変えていかないと逆効果を生む恐れがあるからです。では、早速クレーマーのタイプ別をみていきましょう。
1. 正論主張タイプ
言い換えれば、たしかに口調などは厳しく威圧的ですが言っていることは間違ってはおらず正論である場合ですね。『この場合はこうするって書いてあるだろうが!』のような場合がこれに当てはまります。このタイプの場合、大切なのは相手は正論を言っているということです。非はこちらにあるのですからまずは丁寧に平謝りに謝りましょう。そして、その上で相手に共感を示しながら、お客様を立てるつもりで丁寧に対応していきます。
2. 感情タイプ
このタイプのお客様は、論理的な主張ではなく感情的に『不快感』を訴えてきます。例えば、『そうかも知れないけど、私は不快だった!』のようにルールとして正しいのかよりも、それが気に入るか気に入らないかがその考え方の基本にあるというわけです。ですので、当然正論は逆効果ですし、論理的に諭してもいけません。あくまで、ご不快な思いをさせてしまったことに絞って、こちらの不手際を謝罪するといいでしょう。
3. 理詰めタイプ
このタイプのお客様は冷静に理詰めでクレームをおっしゃいます。ですので、ただ平謝りに謝るとか、ご不快な思いをさせてしまったなどというのは禁句で、相手としては感情の問題でクレームを入れているのではないと逆に気分を害されてしまいます。ですので、このタイプの場合はとにかく冷静に、感心しつつもこちらの結論は先に提示した上で、対応策を協議するつもりで望むと良いですね。
4. お説教タイプ
このタイプのお客様は、クレームの内容を逸脱して社員教育や接客態度などについて教育をしてこようとなさいます。一見それは無茶苦茶な要求のようですが、裏を返せばこちらに対して好意があることの裏返しでもあります。ですので、この場合の対応で大切なことは、感謝です。
お客様の意見を拝聴し、そしてその意見に感謝することです。そして、あまりに逸脱しすぎて教育をしてこようとするときは「暖かく見守ってください」などと言って線引をしっかりとするといいでしょう。
よくある電話のクレームパターンと対応方法
代表的なクレームのパターンからクレームの対応の方法を見ていきましょう。
1. 誠意を要求される場合
いわゆる『誠意を見せろ』という要求ですよね。もちろんこの時に『誠意ってなんだろう?』と悩むことはありません、それはほぼ90%はお金のことになります。こういう場合は相手がとても怒っていらっしゃることが多いので、とにかく下手に出て謝罪を繰り返すことが重要です、そして間違っても『誠意とは何なのか』を相手に聞いてはいけません。
それを言いたくないから誠意と言っているのであって、お金目当てだとは思われたくないけど、お金目当てな自分を隠すための言葉なのです。ただ、これは恐喝になってしまう場合があります。マニュアルの中に返金や慰謝料の規定がない場合は、上司にすぐ相談しましょう。
2. 経緯の説明を求められる場合
これも多いですよね『なんでこんな事になったのかきちんと説明して』という要求です。この場合は、いわゆる怒りや憤りを納得させてくれ、という場合です。ある意味一番良心的ではありますが、一番対応に手間取るタイプでもあります、というのは、お相手の方が納得するように本当に全ての経緯について説明しなければいけないからです。
ですので、必ず折り返しかけるようにしましょう、その場しのぎは基本的には通じません。そして折り返した場合、そのときには、もう何を聞かれても大丈夫なようにしっかりと全体を把握して置かなければいけません。2回目の折返しは、お怒りに直結します。
3. 今後の対応を聞かれる
冷静に、そして一見穏やかに聞かれることが多いクレームです。この場合は、とにかくゆっくりと論理的に話せば大丈夫です。というのもこのパターンのクレームをくださる方というのは基本的には理知的に物事を理解し解決したいという方ですので、感情的にはなりにくい傾向にあります。
ただ、それだけに、相手がどうしても納得出来ないと急に面倒なことに... きちんとこちらが説明できない場合には、金銭の要求から訴訟の話までしてくる場合がありますので、対応できないと感じたらすぐ上司にバトンタッチ。自分でどうにかしないようにしましょう。
基本的には、対応できないときは上司にバトンタッチが一番良いのですが、ここで書いたような傾向を抑えておけば、かなりスムーズに対応できると思います。そして全てに共通するのが、とにかく下手に出ること。もう1つが、恫喝や罵倒、人格否定の罵詈雑言などには取り合わないこと、切ってしまうか上司に変わるなどの対応で回避することです。
クレーム処理は始めが肝心
クレームの電話というのは出た途端すごい剣幕で一方的に怒鳴られたりするときがあります。理由も分からないまま頭ごなしに怒られるのは普通なら誰しもいい気持ちがしないし、お客様の怒りをおさめる事ができるか不安になるときあります。
でもその電話というのは誰かに事情を聞いてほしいのです。お客様の気持ちを聞くという精神で応対することが大切なことです。何に対して怒っているのかお客様の事情をしっかりと誠実に聞くことが大事です。話し終わるまで口出しはしないことが鉄則です。全て話し終わったお客様はある程度スッキリしている事が多いですがそこできちんと一度お詫びをしましょう。
たとえ自分達に非が無い場合であっても、お客様に電話をさせている時点でお詫びをするのが当たり前です。最初の対応ひとつでその後の展開が大きく変わってきます。クレーム処理は始めが肝心なのです。ただの問い合わせの電話も対応次第ではクレームの電話になってしまう事もあります。お客様の一方的な言い方に感情的にならず、丁寧な応対を心がけましょう。
お客様が話している最中は内容のメモをとり、話し終えたら内容を復唱しお客様に確認します。この時、お客様の言葉通りに繰り返して話すと「わたしの言いたい事を少しはわかってくれた」と理解していただくことができます。これで第一段階はクリアになります。
クレーム応対の流れ
クレーム電話にも、ある程度決まった流れの応対があります。様々なケースがありますが、基本的には相手の感情の流れに沿った対応が良いです。まずはクレームの内容をきちんと聞きます。いつもよりも多少大げさに相槌を打って、 話をきちんと聞きましょう。たとえ、お客様に矛盾点などがあったとしても、反論はせずに、とにかく最後まで話を聞いてください。
人は、話を聞いてもらうだけで満足する場合があります。ただ、常にお客様の話を注意深く聞き取り、事実をしっかり把握しなければいけません。次に共感するも大切なことです。お客様の言い分に、共感する姿勢を示します。お客様が間違っていてもお客様の立場に立って共感すれば 親近感を持ちます。そしてその後、必ずお詫びしましょう。こちらに否がなかったとしても、相手を不快な気持ちにさせてしまった事に対してお詫びをします。
そして、解決策を提示し、自分が処理できるか、担当者に替わってもらうべきかを判断し、言い訳を言わず、対処します。その場合、折り返し電話で伝えるようにしましょう。電話を切った時は一旦落ち着いても、時間がたてばまた腹が立ってしまうこともあります。最後にフォローのため、時間をおいて電話してください。このフォローは、クレームを信頼に変えてくれる効果があります。このように、最初から最後まで親身になって誠実に対応しましょう。
電話でのクレーム応対のポイント
お客様が目の前にいない電話でのクレーム対応は、顔が見えているつもりで接するのがポイントです。なぜならば話している態度というのは声にあらわれてしまうからです。声だけでコミュニケーションをとろうとするとささいな事で相手に良くない印象を与えてしまう事もあります。電話でのクレーム応対のポイントは3つあります。
その1 : 相手の話を復唱し確認しながら聞くこと
まずは相手の話を復唱し、確認しながら聞くことです。復唱することで話の食い違いを防ぐ事もできますし、電話をかけてきたお客様も「言い分を分かってもらえた」という安心感を持つ事が出来るのです。また、確認する事でクレームの要点を抑えることができます。
その2 : 言葉には感情を込めて話す
次は言葉には感情を込めて話すことです。いくら正しい敬語で話しても事務的な対応では冷たい印象になってしまいます。
抑揚をつけてひとつひとつ丁寧にわかりやすく話しましょう。ただし過度な敬語は控えるようにしましょう。いくら正しい文法の敬語だとしても、かえって嫌味に聞こえることがあります。状況によって使い分けるスキルが必要になります。
その3 : 相槌等のリアクションをきちん取ること
最後はあいづち等のリアクションをきちんと大きくする事も大事なことです。あいづちは「こちらがきちんと聞いていますよ」という大事な返事です。感情を込めて、普段より大きめのリアクションで相手の方に伝わるよう心がけておきましょう。
悪質なクレーマーの脅し文句に立ち向かう
悪質なクレーマーの脅し文句に立ち向かうには、相手の想定外のセリフを用意しておくことが鍵となります。悪質なクレーマーには自分たちが計算して作り上げたシナリオがあるのです。という事はそのシナリオ通りに物事を進めない様にすればいいということになります。クレーマーのシナリオを阻止し、シナリオそのものを破棄してしまえるのです。「言葉」というのは人それぞれに異なるイメージをもっていたり、様々な解釈の仕方がある抽象的なものがあります。それを巧みに利用するのがクレーマーの狙いです。
例えば「誠意をみせろ」という言葉ですが、どれだけ担当者が誠意を持って対応していてもクレーマーには伝わる訳が無いのです。なぜならクレーマーの誠意の解釈と担当者の解釈は異なっているからです。もちろんクレーマーには具体的な要求や希望があります。しかしそれを言ってしまえば恐喝罪になる可能性があることを知っているのです。だからハッキリとは言わず、望んでいることはこれではないか?と相手が考えてくれる様に言葉巧みに誘導しているのです。
こちらは何も言ってないが、相手が自らの意思でそれを選択したというシナリオを描いているのです。対応策として「誠意をみせろ」という言葉には「私には分かりかねますので、お客様の誠意というものをぜひおっしゃっていただけませんか?」と返すのがいいでしょう。
クレームの解決法
クレーム解決に向かうまでには段階的に対応を行うことがポイントとなります。中でも一番大切なのは常にお客様の満足を考えて行動、対応することになります。お客様が満足するまでのプロセスとして、第一段階では言い分を満足するまで聞くことです。ここで言いたいことが伝わりどうして欲しいか分かってくれることでお客様は一安心します。
第二段階は真摯な態度で謝罪をし、今後の改善を約束します。さらには今後どのように改善していくのかの説明も大切なことです。
第三段階はなぜこのようなことが起きてしまったのか、という原因の説明を丁寧にすることです。事実を正直に話しましょう。
第四段階は具体的な解決の方法とその条件を提示していきます。
このように段階を踏んでいく対応を心掛けて、なるべく早い段階でお客様に納得して貰えることが一番良いクレーム解決法であると思います。対応中は、お客様が理解できる言葉で分かりやすく説明するようにします。専門用語を並べられてもお客様はちんぷんかんぷんですし、分からないと思ってバカにされていると感じてしまいます。これではお客様を更に怒らせてしまう結果になってしまいます。誰にでもわかる言葉を使って分かり易く話すようにしましょう。
クレームからの縁
お客様からのクレーム電話はできれば避けたい事なのですが、このクレームからのご縁は非常に重要なことなのです。どこの企業でもクレーム対応はきちんと行っていると思いますが、それをご縁にしていきましょう。ですが、クレーム応対が済んですぐに売り込みはできませんし、クレームからのご縁は、そのお客様に売り込みをすることではありません。
クレーム対応というのは、電話でご説明と謝罪もしくは直接お伺いをしてご説明と謝罪などの対応で終了となるでしょう。この対応でお客様が満足の場合も、そうでない場合もあると思いますがこの時に、お客様からご意見などを頂戴することが出来ます。謝罪の場合は、実際にお詫びをしながら、お客様のお声を頂戴することができます。まずは、今後の不都合のないようにするために、そしてお客様にご満足が得られるような対応を心掛けるためにも、十分にお客様の声をお聞きます。これは本当に貴重なご意見となるのです。
これ以降は業種、内容に応じてそれぞれ工夫しながら対応していきましょう。お客様からのクレーム電話からのご縁をどう発展させていくかはとても大事なことなのです。売り込み中心ではなく、貴重なご意見を頂いたことに対する感謝と改善、改良の進歩などを報告しながら、さらにお客様とのコミュニケーションを深めていきましょう。
クレーム対応からの精神の保ち方
仕事よりもあなたの心身の方が大切。でも、気を病むくらいなら、言葉は良くないですが頭の中で軽くポイしてしまったほうが心身のためです。まず、これが大前提で精神の保ち方のコツです。確かにクレーム処理というのは会社にとっては重要なことです。また、お客様というのは最も大切にしなければいけない対象ですが、あくまでそれは仕事においてです。
お客様がいかに仕事の中で大切な対象でも、言うまでもないことですが、仕事よりあなたの心身ほうが大切です。もしあなたが心を病んでまで、もしくは病みそうになるまでクレーム処理をし続けているのであれば、しっかり上司と相談して配置換えなどの適切な対応をしてもらいましょう。繰り返しますが、まずはそれが大前提です。クレーム対応上の精神の保ち方をレクチャーする前に無理をしないことを心がけてくださいね。
まず精神の保ち方で大切なことは『忘れる』ことです。クレーム対応は確かに重要で大変なことですが、よく考えてみれば、あなたはその会社の全責任を負う立場ではありません。また、逆に負える立場でもありません。ですので、あなたが誠心誠意のクレーム対応した後のことは、ある意味あなたにとってはすでに関係のないことでもあります。
その先は責任のある人たちや専門の方たちが対応することであって、あなたがずっと気に病んでいても仕方がないことなんです。だから忘れても全然問題ありません。それこそ対応し終わったら、作業的に「ハイ次!」な感覚をもっていないと、次の電話応対に支障をきたす恐れがあります。そして、重要でないことはいちいち感情的にならずに聞き流すことも必要になります。
重要なこと、例えばクレームそのものの内容とか、担当者の名前、お相手の名前などはしっかりと聞いておかなければいけませんし、しっかりメモをとる必要があります。しかし、クレームの電話に費やす時間の大半は『お叱り』です。もちろん真摯に受け取るべきお叱りもありますが、心が辛いようなときには適度に受け流す、左耳から入れて右耳に出すような脳内スルーできるスキルも必要になってきます。
特に、お小言というのは繰り返しの連続になりますから2回目からはスルーしていかなければ逆に収拾がつかなくなってしまいます。相づちだけはしっかりと丁寧にうつことを心がけて、お相手の怒りが静まるのを地蔵のように待つこが重要なポイントになります。
さいごに、厄介なモンスタークレーマー電話はまともに取り合ってはいけません。これは企業防衛としても大切なことですが、ただの罵倒や人格否定等といったものは普通に傷害や恐喝に値することですので、その兆候があれば取り合ってはいけません。また、明らかに度を超した罵声などは電話を切って大丈夫です。電話代行サービスの電話秘書オペレーターとしてではなく、ひとりの人間として、あなたの『心』より大切な要件の電話は存在しない、と断言させていただきます。
ここ数年で、なぜか言葉が荒れている人が多くなってきました。渋谷オフィスの電話秘書代行では、そのような過剰行行為を少しでも減らすという意味でも自社開発の通話録音サービスがございます。通話録音は自動車でいうところのドライブレコーダー的な抑止力があります。それにより耐え難い言葉の暴力を少しでも防衛することができますので、もし御社でも耐えがたいモンスタークレームが多発するのでしたら通話録音をしておくことも一考かと思います。弊社のような特別な録音装置でなくても簡易的に通話録音ができるだけでも、いざというときは役に立つでしょう。今ではいろいろな録音機器が販売されていると思います。
最後に
情報元として、UAゼンセン流通部門調査が発表しています「悪質クレーム対策(迷惑行為)アンケート調査結果」のPDFをご参考ください。
最後に、私が電話代行のお仕事で出会ったクレームについてのお話をいたします。電話代行での電話応対の仕事というのは、きっと一般の方々が一年に出会うくらいの人数に、それこそ2,3日で出会ってしまうくらい出会いの多いお仕事です。ですので、時には『いい話』に出会うことも。(^^
そこで、ここではみなさんに電話代行で出会った心温まる話として、少し幸せのおすそ分けを♪ ちょっとだけ温かい気分になってもらえれば幸いです。電話代行のお仕事では、時にクレームをいただくことがございます。もちろん世の中には悪質なクレーマーの方もいらっしゃいますが、そういう方ばかりではありません。本当にお困りごとを抱えていらっしゃる方も、もちろんいらっしゃるわけで......。その方はとある理由でかなり怒っていらっしゃいました。年齢は50代、男性の方です。
私共してはクレームを受け取って、その内容を契約者様にお伝えするようになっておりますので、その方のお怒りを鎮めながらクレームの内容をお伺いしていたのですが、ふと..こんなふうにおっしゃいました。「こんなふうに怒られて嫌じゃないのか?」と。もちろん心のなかでは、私も人間ですから「嫌ですよ」と思ってはいましたが、そこはお仕事です。「そんなことはございません」とお答えしました。そうすると、その方は「うーん」と唸るとちょっと咳払いをなさってこうおっしゃったのです。「申し訳ない、大人気なかったですね..」と。
そのお言葉に、先程までかなりお怒りのご様子でしたので、私はちょっとびっくりいたしました。ただ、その方はそのようにおっしゃると続けてこうおっしゃったのです。「あなたが真摯に話を聞いてくれて対応してくれているので、なんだか自分が恥ずかしくなった」と。もちろんそのように言われて嫌ではありません。
しかし、私としては「ありがとうございます」とお礼を述べたあと「そんなことはございません、お怒りはごもっともです。」とお答えしたのですが、その方はなんとその言葉に涙ぐまれているようで。電話の向こうで鼻をすする音が聞こえてきました。そして、こう続けられたのです。「こんなふうに人の話をしっかり聞いてもらえたのは本当にいつぶりだろう」と。
家族のために働き、なのに、家に帰ったら一人ぼっちの疎外感。部下たちは昔のように慕ってくれず、忙しさにかまけていたら利害関係のない友達は1人もいなくなっていた。そんな日常の中で、たとえ仕事だとしても、あなたはしっかりと私の話を聞いてくれた。本当にありがとう。うれしかった。あなたの声には心がこもっていました。
その方はそう言って電話をお切りになりました。気がつくと私も涙ぐんでいました。それではある意味、プロとして失格なんでしょうけど、それでもこらえきれませんでした。とにかくその体験は、電話代行の電話秘書オペレーターで良かった。そう思える瞬間でした。