ISDNは時代遅れのネット回線?
ISDNと聞いてどのようなイメージを抱きますか?おそらくほとんどの方が「時代遅れのネット回線」と答えるはずです。 確かにISDNに対してそういった認識をしている方はとても多いのですが、実は「時代遅れのネット回線」という捉え方は間違ってはいないものの、正解でもないのです。
言ってしまえば、本来のISDNについてきちんと理解していないからこそ認識がズレてしまっているのです。というのも、そもそもISDN回線はインターネットをするための回線ではないのです。
この点を理解しておくと、ISDNへのイメージも変わってくるかと思います。
ダイヤルアップ接続だった時代に注目されたのがISDN回線
インターネットが普及するようになって結構な時間が経過していますが、その中でインターネット回線というのはさまざまな変遷を経てきました。
今でこそ光回線が主流となっていますが、かつての日本にはインターネット回線がダイヤルアップ接続であった時代がありました。
ダイヤルアップ接続というのは、電話回線をそのまま利用することによっておこなわれていたネット通信で、接続するときには「ピーヒョロヒョロ」といった音がしていました。
覚えている方も多いのではないでしょうか?今思い出して「懐かしい!」と思っている方もいるかもしれませんね。当時は当たり前に使われていたダイヤルアップ接続なのですが、決定的な弱点がありました。
それはズバリ、「電話を使うと、ネットが切断されること」でした。 インターネットをするときのデータのやり取りは、電話で通話するのと同じように電話回線を通じて音でやり取りがなされることになります。
言ってしまえば、道がひとつしかないのでどちらかしか使えないわけですね。もちろん、今ほどインターネットへの依存度が高かったわけではないでしょうが、それでも不便なのには変わりありません。
そこでどうにかできないかと考えるようになり、多くのネットユーザーと電話会社が目を付けたのがISDN回線だったというわけです。
ISDNはもともとインターネットをするための回線ではなかった
「ダイヤルアップ接続じゃ不便だなぁ~」というところから注目されるようになったISDN回線。ISDNというのは「Integrated Services Digital Network」の頭文字をとったもので、「総合デジタル通信網」「サービス総合ディジタル網」と呼ばれています。
今の光回線とは比較になりませんが、当時としては大容量の通信速度を誇ったデジタル回線だったのです。 では、なぜデジタル化して大容量でなければいけなかったのでしょうか?
というのも、実はISDN回線はひとつの回線を複数、主に2つの電話回線に分岐することを目的に開発されたものだったからです。また、もうひとつの目的があって、それは分岐できるという特徴を使ってデータ交換用の情報網を電話線を使って構築するというものでした。
つまり、ISDN回線は、最初からインターネットをするための回線ではなかったのです。しかしながら、ISDN回線の持つメリットが当時の「ひとつの回線が通話に使われるとネットができない」というデメリットをカバーするのにちょうどよかったわけですね。
さらに、通常回線より容量も大きかったのもポイントになりました。 このような流れで、もともとはインターネットをするための回線ではなかったISDN回線がインターネットをするための回線として一気に広まっていくことになったのです。
例えるのであれば、水を入れておくための水差しが花を飾る花瓶として使われているような感覚です。 本来の使い方とは違うものの、しっくり来てしまったがゆえにその使い方が広まってしまったわけです。
本来の目的で使えばISDN回線はいまだに優秀
当時としては画期的だったISDN回線もADSL回線にその主流を奪われることになります。ただ、そのADSL回線も今はほとんど見られなくなりましたけどね。 現在主流となっているのは何度もお伝えしておりますように、光回線です。
その光回線の登場によって、ADSL回線のさらにその前の世代であるISDN回線というのは「時代遅れの回線」と認識されるようになったのです。それこそISDN回線はナローバンド、つまり低速通信の象徴のような存在にもなっています。
しかしながら、何度も繰り返しているようにISDN回線というのは、もともとインターネットの回線用に開発されたものではありません。本来の使い方をしているわけではないのに、「時代遅れ」と言われてしまうのはさすがに可哀想です。
もともとISDN回線というのは電話線を2回線に分岐させることが目的の回線です。これは一般のご家庭ではもちろんのこと、オフィスにおいてもかなり使い勝手のいい回線です。
さらに、もうひとつの目的であるデータ交換用の情報網としては、いまだに優等生です。 というのも、今は動画のような大容量のものを前提で考える傾向にありますが、だからといってすべてが大容量になっているわけではありません。
ISDN回線は動画のような大容量のものではなく、文字情報や小さなデータ量のものであれば今でも問題なく使っていくことができるのです。しかも、ISDN回線は電話回線ですから、とても安価なのです。
それでいて、信号ロストというデータの劣化が極端に少ないのです。こういった魅力があるからこそ、EDIと呼ばれるクレジットカード決済やPOSレジの情報共有などのためのデータ交換網としてISDN回線は今でも使われているのです。
インターネットという本来の目的としないところではもう不十分になってしまいましたが、ISDN回線の本来の目的通りに使えば今でも十分に通用するものなのです。
インターネット回線としての側面だけを見て、「時代遅れ」と認識してしまうのはISDN回線に対して失礼と言ってもいいでしょう。
ISDN回線が終了する2024年問題
しかしながら、残念なことに2024年NTTはISDN回線のデジタル通信を完全に終了させてしまいます これが、いわゆる「2024年問題」というものです。
昔のインターネット回線というイメージが強いISDN回線だからこそ、自分たちが当たり前に使っている情報システムにISDNがいまだに現役で使われていることを知らない企業も少なくありません。
だからこそ、ISDN回線のデジタル通信の完全終了によって大きな混乱が発生するだろうと予想する専門家もいます。ISDN回線が完全に終了してから動くのでは、やはり遅すぎます。
ちょっとした動きが遅れることによって、企業にとってはそれが大きなダメージとなることもあります。「うちに限ってそんなことはない」「うちは絶対に大丈夫」という方もいるかもしれませんが、そういうときほど確認をしたほうがいいのです。
ビジネスに限らず、世の中においては「絶対」ということはないのです。 もし、貴社においてデータ交換用の情報網を利用しているのであれば、一度確認してみることをおすすめします。
ちなみに、2024年問題にはISDN回線の完全終了だけではなく、50歳以上の人口が全人口の5割を超えるということも含まれています。どちらにしても、2024年というのは日本人にとって大きなターニングポイントとなりそうです。
まだまだ先のように思えるかもしれませんが、2024年はそう遠くない未来です。さまざまな面で大きな変化が起こることになるでしょうから、早め早めに対応していきたいところです。